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誉さんがクラッチを繋ぐと、バイクはフォンッと音を立てて走り出した。アパート前の鹿ヶ谷通から今出川通に入り、さらに曲がって白川通へと入ると、まっすぐに北上していく。
白川通に植えられた街路樹に目を向けながら、私は後部シートで誉さんの体に抱き付いていた。以前乗せてもらった時よりも、もっと、心臓がドキドキと音を立てているような気がする。
京都市の北部、宝ヶ池、岩倉を抜け、更に走ると、だんだんと民家が少なくなり、山道へと入って来た。
(山に入ってから気温が下がった気がする)
叡山電鉄の貴船口駅が現れると、誉さんはその手前のY字路を、赤い鳥居が立つ方へ曲がった。急に細くなった山道をしばらく走った後、バイクは駐車場の前で止まった。
「着いたぞ」
誉さんは先に私を下ろすと、適当な場所を見繕いバイクを駐車させた。そして自分もバイクから降りるとヘルメットを脱ぎ車体の横に取り付け、私のヘルメットは車体の上に乗せた。タンクバッグを取り外し肩にかけると、
「行くか」
と言って私を見下ろした。
「はいっ」
笑顔で頷き、誉さんを見上げて元気よく返事をする。貴船神社を目指して、ふたり連れ立って歩き出した。
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