5.貴船神社の神馬

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 作法にのっとりお祈りをした後、ふと本殿の傍らを見ると、水占おみくじというものが置いてあることに気がついた。  興味深く近づいてみると、 「そのおみくじは少し変わっていてな。そっちの御神水に浸すと文字が浮き出てくるんだ」 再び誉さんが教えてくれる。 「やってみたいです!」  面白そうなおみくじだ。私は早速、水占おみくじの側にある箱にお金を入れると、1枚抜き取り、御神水に近づいて水面に浮かべてみた。すると紙の中にみるみると文字が浮かび上って来る。 「本当に文字が出て来ました。不思議ですね……」  くっきりと文字が浮き出たところでおみくじを掬い上げると、 「小吉……」 あまり良い運勢ではなく、私は肩を落とした。 (ええと、恋愛は……『破るるおそれあり』) 「…………」  良くない結果に、更にがっかりする。 「どれどれ……『願望 時を待て 叶う』か。そんなに悪くないじゃないか」  誉さんは私と違うところに目を点けたらしい。「良かったな」と声を掛けられ、複雑な気持ちになった。  おみくじを結んだあと、境内を出て階段を下りながら、誉さんが、 「貴船神社にはここ本宮の他に、結社と奥宮というふたつのお社があるんだ。結社には、天孫降臨した瓊々杵尊(ににぎのみこと)が娶った木花開耶姫(このはなさくやひめ)の姉、磐長姫命(いわながひめのみこと)が祀られている。 姉妹の父親が瓊々杵尊に、結婚相手にと姉妹を遣わしたんだが、瓊々杵尊は、磐長姫がいわゆる『ブサイク』だった為に、彼女だけ送り返してしまったんだ。磐長姫はそれを恥じて、『自分の代わりに人のために良縁を結ぼう』と考え、この地に鎮まったんだそうだ。 奥宮の御祭神は本宮と同じく高龗神で、本殿の下には龍穴と呼ばれる大きな穴がある。龍穴は、絶対に誰も目にしてはいけない、神聖なものなんだ」 と教えてくれる。
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