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緩やかな坂道を上り、まずは手前の結社を目指すことにする。少し歩くと、すぐに結社と書かれた札が見え、私たちは側の石段を上がった。
境内へ入ると、私は、縁結びの神様である磐長姫命が祀られているお社の前に立ち、真剣に手を合わせた。
(誉さんとの縁をもっと強く結んでください。出来れば、誉さんも私のことを好きになってくれたら嬉しいです……。宜しくお願いします……)
すると、ふと誰かの声が聞こえ、
「……?」
私は目を開けると、小首を傾げた。先に祈り終わっていた誉さんを振り向き、
「誉さん、何か言いましたか?」
と尋ねると、誉さんは怪訝な顔をして、
「ん?特に何も言ってはいないが」
と首を横に振った。
(なんだか「承った」って聞こえた気がしたんだけど……)
私たちの他には誰もいない。空耳かと思い、私はそれ以上深く考えずに、今度は奥宮に向かうことにした。
さらに坂を上り奥宮に着くと、長い参道の先に門を挟んで境内が広がっていて、 拝殿と本殿が建っていた。本殿へ向かい、ここでも手を合わせる。この中に、誰も目にすることが許されないという龍穴があるのだろうか。そう思うと、背筋が伸びるような、厳粛な気持ちになった。
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