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(違う職種に就いてみようか。例えば、今まで経験したことのない販売業とか)
そう考えて、百貨店の化粧品売り場でコスメを販売したり、アパレルブランドで流行の服を販売している自分の姿を想像してみた。
(……なんだか違う)
自分はメイクや服に詳しいわけでもないし、それほど美人でもお洒落でもない。
(じゃあ、飲食店とか?)
今度はそう考え、ふと、京都の『Cafe Path』のことを思い出した。確か扉の所に、求人募集の貼り紙が出ていたはずだ。
「…………」
自分が『Cafe Path』で働いている姿を脳裏に思い描き、思わず考え込む。
「……まさか、愛莉、京都まで行くつもり?」
自分に言い聞かせるように自嘲気味に独り言ちた後、私はスマホを枕元に放り投げ、ごろんと横を向いた。
けれど、一度、思いついてしまった考えは、なかなか手放せない。
誉さんと颯手さんの顔を思い出し、次第に私の心は懐かしい気持ちでいっぱいになった。
「神様がくれるのは、ご縁……願いを叶えるのは、自分の力……」
そうつぶやくと、私はむくりと身を起こした。放り投げたスマホを手に取ると、『Cafe Path』の名前を検索する。すると、グルメサイトに名前がヒットし、ページを開けると、すぐに電話番号を見つけることが出来た。
「……よし!」
私は意を決してその電話番号を入力すると、通話ボタンを押した。
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