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橋を渡り、本格的に山の中に入ると、丸太で補強された階段を上り始める。しっかり階段があるので楽なのかと思いきや、なかなか急で、序盤からハードな道のりだ。
「まだ少し薄暗いから、足元に気を付けて。しんどかったら休憩しながら行くし、言うて」
先を行く颯手さんが、はぁはぁと息を切らせながら遅れがちになる私を気遣い、何度も振り向いてくれる。
急こう配の階段は途中から無くなったが、その後は緩やかで歩きやすい道と、足元の悪い道が交互に続き、
(ダメ……もうバテそう……)
心がくじけかけた時、ふいに開けた場所に出た。
「ちょっと休憩しよか」
颯手さんが立ち止まり、リュックの中からミネラルウォーターのペットボトルを2本取り出すと、1本を私に手渡してくれた。
「ありがとうございます」
受け取ってキャップを開け、口を付けると、ミネラルウォーターが疲れた体の中に染み渡った。
ここは登山途中の休憩スポットになっているのだろう。人心地ついてから周囲をぐるりと見回してみると、広場の中にお地蔵さんを見つけて、私は首を傾げた。
「お地蔵さん……?」
こんなところになぜ、と思っていると、私の視線に気が付いたのか、颯手さんが、
「ここは『千人塚』て言う場所やねん。第二次世界大戦末期に、軍がここを掘り返した時、地面の中から人骨の入った壺がぎょうさん出てきたんやって。いつの骨かは、よう分かってへんらしい。このお地蔵さんは、その供養の為やね」
と教えてくれる。
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