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きっと私が同じ立場になったら、香奈枝さんと同じように悩むと思う。
私が仮に妊娠して、離婚をすることになったとしたら、シングルマザーとしてしっかりと子供を育てて行けるのだろうかと、不安になるに違いない。
私は社会人としても、大人としても未熟だし、ひとりで生計を立て、子供を育てていく自信はない。
それなら、離婚をせず愛のない家庭で子供を育てる道を選ぶのか、いっそ産まないという選択をするのか……。
命は、大切にされるべきものだ。
けれど、私だったら……私だったら……一体どうするのだろう……。
香奈枝さんの心に寄り添えば寄り添うほど、我が身に置き換えて想像を巡らせ、私はだんだん胸が苦しくなって来た。
「……杉沢さんは、ご主人と本当に別れたいんですか?もし別れた場合、ひとりで子供を育てていくという選択肢はないんですか?」
静かにそう尋ねると、
「……分かりません」
香奈枝さんは首を振った。
「…………」
私はそれ以上かける言葉が見つからず、ただ、ぎゅっと香奈枝さんの手を握り締めた。
オレンジジュースの氷が溶けて、からん、と音を立てた。
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