40人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
ガタンゴトン、ガタンゴトン。
そして迎えた月曜日。
いつも通りの朝を迎えた彼女は、心臓が今にも口から飛び出るのではないか、いや、口からと言わず、自分の薄い胸を突き破って飛び出てきてしまうのではないか、という程に緊張していた。
いつもの座席に座り、いつものように化学ⅡBの教科書を出す。
かと思いきや、一度は出した教科書を再び鞄に仕舞うと、次に取り出したのは物理の資料集。
教科書より一回り大きい資料集を開いて、顔を隠すように前に持ち、はぁぁぁ、と彼女は大きくため息を吐いた。
結局、週末に男性からの連絡が来ることは終ぞなかった。
見慣れた友人からのLINEの通知のみが並ぶ携帯の画面を穴が開くほど眺め続けたせいか、少し目がしょぼしょぼしている。
きっと今日、あの男性がこの車両に乗ってくることはないだろう。
簡単なことだ。
たったそれだけで、男性と彼女を繋いでいた縁はなくなってしまう。
そもそも最初から、『縁』などなかった。
ただ毎日同じ車両に乗っていた。それだけなのである。
もう会うこともないのかもしれない。
諦めかけると、目元にじんわりと涙が溜まった。
諦めなきゃ、なぁ……。
一筋の涙とともに、彼への想いが開いたままの資料集へと落ちる。
カラーの資料集は涙を受け止めてはくれない。弾かれた雫は無情に紙の上を滑り落ちていった。
最初のコメントを投稿しよう!