十年後の僕へ

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亮一は小学生以来となる生まれ故郷へと降り立った。 相変わらずの寂れた駅で人通りも全くない。 「よぉ、久し振りだな」 歩きながら手を挙げて声を掛けてきたのは同級生だった淳也。 「変わってないなぁ」 笑いながら淳也に挨拶する。 「それは俺がか? それとも、この町がか?」 「両方だよ」 お互いの現状を話しながら二人は懐かしい道を歩く。 たどり着いたのは今は使われていない木造校舎の小学校。 今年中には取り壊される事が決まっている。 「昨日は来れなくて悪かったな。 沢山集まったのか?」 取り壊される前に、同窓会を兼ね、十三年前に埋めたタイムカプセルを掘り起こす事になっていた。 「いや、みんなこの町出て行ったからな。 俺を入れて五人と館山だけだ」 担任だった恩師を呼び捨てにするやんちゃ振りは変わっていない。 「そうか、俺の分も出しておいてくれたらよかったのに。 ちなみに何が入ってた?何を入れたか全く覚えていないんだ」 「手紙だよ手紙。 『十年後の自分へ』ってみんな書いただろ」 「そうだっけ?全く覚えてないや」 頭を掻きながら亮一は笑った。 「でも、十年後じゃなかったんだな」 亮一の疑問に笑みなく淳也は答える。 「……不幸が重なってな」
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