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校長室は一階に位置しているため、窓のほうに回って様子を見てみるというのは、少なくとも実行までの心理的なハードルの高さを思えば、実に簡単なことだった。
しかし。
厚手のカーテンが閉ざされているため中を伺い知ることはできなかった。
ヒートヘイズは窓が開かないことを確認すると、庭にあった大きめの石を使って窓ガラスを叩き割ると鍵を器用に開けて窓を開放した。
「おい、いいのかよ。勝手にそんなことして」
「だから緊急事態かもしれないって話になったじゃないか」
——確かにそうだが。
せめてドロシーに確認してからにすればよかったとケブラーは一連の流れに後悔の念を抱き始めていた。
「どうやら本当に緊急事態みたいだな」
ケブラーが窓から乗り込んで、顔にかかるカーテンを払おうとしていると、先に乗り込んだヒートヘイズがぼそりと呟いた。
同僚は青ざめた顔で部屋の中央ほどを指さした。そこには学校長が横たわっていた。その相貌は青紫色に変色しており、左の脇腹には矢が突き刺さっている。
「ケブラー、あれを見ろ」
ヒートヘイズが再び指を指す。その方向には扉があった。扉の閂錠は確かに閉まっていた。このことがのちにどのような意味を持つのかケブラーにはまだよくわかっていなかった。
この後、ケブラーは腰を抜かしてしまい、ヒートヘイズは相棒が役に立ちそうにないことを悟るとここを見張っていろよと言い残して応援を呼びに行った。
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