魔術師は密室で射殺される

十 ここで一つ事件を整理してみよう（一）

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「改めて確認したいことがあります」とアロンソ巡査。なんですか、とステイシーは応じる。
「不勉強を晒すようで恐縮ですが、例の魔術残渣というのは空間転移の魔術の場合どのように検出されるものなんでしょうか」
「それについては二年ほど前にケイコ・ミカミ氏自身の協力によって得られたデータがあります。魔術によって移動された対象からは魔術残渣が検出されます。服役中の窃盗犯サイモン・シェーンフリースにも協力させましたデータも存在します。
　シェーンフリースの魔術は二つの黒い穴を発生させ、その穴同士で物体を行き来させるというものでしたが、これについてもこの二つの穴を通った物体からは魔術残渣が検出されています。
　そしていずれも空間そのものから魔術残渣を検出することには成功していません。したがって彼の仮説——《変則内出血密室説》とか最後に言ってましたね——を証明するにしても反証するにしても先生方の身体から魔術残渣を検出する必要があったのですが。身体から魔術残渣が検出された者、つまりは転移魔術をかけられた可能性のある人間は教員だけでも——」
「——まさか三十七人もいるとはね」
「ええ、本当に頭を抱えたくなりますよ」