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「——なるほど。共犯ですか」とアロンソ巡査。
「まああくまで可能性のレベルですがね。そういう可能性も厳密には有り得るという話です」
二人はクエイク警視を待っているが、まだ彼は帰ってこない。
「実は私も一つ仮説を思いついたのですが、披露してもよろしいでしょうか。バレット君にならって名付けるなら《後付けの密室説》といったところでしょうか」
どうぞとステイシーは言った。
「あのあと学長室でも徹底的に魔術残渣の検出作業が行われましたが、魔術残渣が検出されたのは執務机の上にあったスタンド型の魔動ランプ——魔力を込めるだけで誰でも手軽に起動できる照明器具だ。火事の心配もない優れものである——と壁、扉、窓——これは例の部屋の外からの魔術干渉を阻害する魔術によるものだと見られる——でしたよね」
ステイシーは首を縦に振った。
「犯人は部屋を一部破壊したんです。それが壁か天井かはわかりませんがね。扉や窓だったという可能性もあります。これによって学長室は一時扉や窓が閉まり、閂がかかっているにもかかわらず開放された状態だったのです。この壁や天井に穴を開けるという行為がミカミ・ケイコ氏殺害前に行われたのか、殺害後に行われたのかは定かではありません。まあ殺害後に行われたと考えるほうが自然でしょう。
とにかく犯人はミカミ氏の遺体が部屋のなかにある状態で壁や窓に開けた穴を整形したんです」
「アロンソさん、実はその可能性は僕も考えていました。ですが、この壁、扉、窓の魔術残渣はいずれも部屋の外側から検出された者なのです。今回部屋に使われていた防衛魔術では部屋の外壁にしか魔術残渣が発生しないんです。
そしてアロンソさんが今言ったトリックが使われなかった証拠に部屋の内側では壁、天井、窓、扉、床、いずれからも魔術残渣が検出されていません。もし壁等を魔術で整形したとすれば、必ず内側からも魔術残渣が検出されるはずです」
クエイク警視はまだ戻ってこない。
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