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十三 我等は理屈の僕なり
クレスとの事件の検討を終え、俺はとりあえず寮の自室に戻ることにした。窓の外では少し間から稲光が瞬き、それが連れてきた轟音が鳴り響いていた。
一人になりたい気持ちもあったが、部屋には相部屋のノートン・ハワードがいる。貴族出身だが、気のいい奴である。
外に一人でいて、不特定多数のいかにも事情を聞きたげな視線に晒されるよりはいくらかマシに思えた。
「お疲れ。大変だったみたいだね」
そう一言言ってノートンは机の上に広げた課題との格闘に戻る。彼が無遠慮に事件のことを尋ねるような人間でないことは、二年生進級時に相部屋となってからの数か月でわかっていた。
部屋の扉を叩く音がする。二回。ノックだ。
立ち上がろうとするノートンを俺は制す。
「俺が出よう」
扉の向こうに立っていたのは赤毛の男、デュソル・ステイシー警部補だった。
「どうしたんですか」
「君にちょっと話があってね」
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