三 初動捜査

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三 初動捜査

 クエイクが現場に足を踏み入れると、先に到着していた部下が足早に近づいてくる。 「お疲れ様です、警視。被害者はケイコ・ミカミ。七十四歳。この学校の学校長で……」 「あー、そんなことはいちいちことは説明しなくても構わん」  今や小学校の教科書にも乗るような人物についてわざわざレクチャーを受ける必要はない。昨今の若者は年寄りが何にも知らないと思っていて困る。などというほどクエイクは年寄りでもないはずなのだが。 「死因はなんだ。失血死か」  クエイクは無残にも脇腹に突き立てられた矢を見て呟く。それにしてはこの死斑の色は妙だと思った。 「いえ矢に塗られていた神経毒によって呼吸困難になったようです。監察医のレシッグ先生の見立てでは、発見された時点で死後十時間近くは経過していた模様です。  それと第一発見者の教師二人の証言では、死体発見時この部屋の扉と窓の鍵はどちらも閉まっていたとのことです」 「それがどうした。まさか密室殺人などと言い出すつもりではあるまいな」  犯人は自分が外に出たあと念動魔法で鍵を動かしただけの話だ。
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