四 空間移動魔術史概論

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四 空間移動魔術史概論

「空間移動だとう? しかし空間移動の魔術は——」  ある地点Aとある地点Bの間を非連続的に移動する魔術を空間移動の魔術と呼んでいる。 「わかっていますよ。記録にある限り、5人しか使用者がいないし、存命人物では3人しかいないんでしょう。いやもう2人になっちゃったのか」  赤毛の男——ステイシー——は大袈裟に肩をすくめる。  空間移動の魔術がはじめて世に現れたのはちょうど百五十年ほど前になる。このヴィヘム魔法学校の学長も務めた魔術研究の大家サジェク・アビスコルの研究成果だ。このアビスコルの空間移動魔術はその準備に数時間を要し、移動可能な物体の質量は十グラムと少しが限界で、移動できる距離は十センチにも満たなかった。さらに移動する地点Aと地点B、がどちらもアビスコルから見えている必要があった。  つまり学術的な発見や見世物以上の価値はなかったと言っていいだろう。実際アビスコルはこの魔術を実演することで研究費を稼いでいたという。
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