水曜日「ギター弾きのねこ」

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水曜日「ギター弾きのねこ」

ある日りんごの木の下でねこがギターを弾いていた 「おいらはねこさ、桃色の。猫背のねこさ、しがないねこさ」 パンパラパラリ ジャカジャカジャン 「帽子目深にギターを弾いて、日がな一日暮らしてる」 パンパラパラリ ジャカジャカジャン そこへ村長やってきた。 犬の村長やってきた。 「どうもねこさんこんにちは。とても素敵な歌ですね。頭をくらくら痛ませて、この村じゅうの赤んぼのお腹しくしくうずかせる。早くそいつをやめないとお前のギターをへし折るぞ」 これにはねこも怒り心頭。犬のしっぽを引っ掴み、ぐるりぐるぐる回しだす。きゃんきゃん叫ぶ村長の声が村じゅう響くので村人たちもやってきた。 ところがそこにあったのは二つのギターと一匹のねこ。 「ねこさんこれはどうしたの」 村人たちがきくけれど、ねこはそれには答えずに次の町への旅支度。缶詰、ナイフ、ハンカチに、小銭少しと古びた本を一冊だけ。古いギターは捨ててった。そうしてねこは新しいギターを抱いて出ていった。
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