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徒歩5分。田舎なのに歩いていけるコンビニは貴重だと思う。
これでもかとスペースを無駄遣いしている、広い駐車場を横切って、店にはいる。ひんやりとした空気にほっと吐息がこぼれた。
アイスボックスは店の奥にあるはず。記憶をたどりながら歩き出す。
飲み物が陳列してあるガラス張りの冷蔵庫。その前を通ったとき、ふと視線が吸い寄せられた。
ビール瓶の隣、まるで場違いで困った様な風情でならんでいる、深いグリーンとブルーをまぜた色合いの瓶。
(ラムネ……)
甘ったるいくせにさわやかな味。喉を抜けるときに感じる、こそばゆさにむせそうになる炭酸の感覚。
懐かしさがこみあげてきた。わたしにとってラムネイコール青春の味。いつからか、わたしの中でセットになっている。
帰省して地元にいるせいで、少し感傷的になっているのかもしれない。
ため息まじりの笑みがこぼれたまま、アイスボックスへ向かう。
色とりどりなパッケージを纏ったアイスたち。こんな蒸し暑い日は、棒を持ってたべる氷菓タイプ一択。
手を伸ばして青いパッケージのものを掴む。無意識に2つ、買い物かごにいれていて、はっとした。
まだ修一と住んでいたときの感覚が抜けない。わたしから、彼の手を離したというのに。
別れなんて想像もできなかった幸せな日々。張り詰めた空気が流れだしてからの諍い、別れの痛みまで。
それらすべてがまざりあって、まだ胸を軋ませる。
小さく首を振って、袋のひとつを冷凍ボックスに戻そうとしたけれど、手が止まる。
(2つ、わたしが食べればいい、よね)
そう思ったら、少し気持ちが楽になった。無理に変えなくていい。時間がたてば、こんな感情も薄まっていくはず、だから。
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