獅子崎 燕は死にたい

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獅子崎 燕は死にたい

 授業が始まってから30分は経っただろうと時計を確認するが残酷なことに針が示すのは15分の経過。 (あー、死にた) こんなことでと思われてしまうかもしれないが、実際生きる意味を見出せていない私は、何か不幸な事が自分に起こればそれよりかは死んで早く楽になりたいと思ってしまう。 特別家庭の事情が拗れていたりするわけでもない。 なにか絶望的な体験をした過去があるわけでもない。 それでも私は、獅子崎 燕という人間は 死にたい そう思ってしまうのだ。 こんな気持ちが世間様に知れれば不謹慎だと罵声を浴びる、それは確実だ。 過去の惨劇、大災害や本当に報われず命を失った・絶った人の気持ちはどうなる?と。でも私から言わせてみればそんなものはエゴの押し付け過ぎない。 死にたくなくて死んだ人がいるのは認める。手だって合わせよう しかし、死にたくて死ぬ人がいても良いじゃないか! 死んだ人の気持ちは死んでから理解しても遅くない、個人の自由だ、そうだよね?あの子(・・・)もきっと自分から死にたかったんだ、誰にも邪魔されないところで。私のこれもエゴに過ぎないのだが。 そんなことを考えていると思っていたよりも時間が経っていたのかチャイムが鳴った。 (やっば、ノート取ってない)  こういう感じで暇を潰しすぎることは多々ある。 とりあえず黒板を全部写そうと手を働かせるが日直が消す方が早かった、こういう時自分の友達のいなさとコミュ力の無さに失望する。 「つーちゃんまたぼーっとしてたでしょ?」 後ろから鈴が声をかけてきた 「もしかして見られてた?」 「斜めうしろの席だもん、目に入っちゃうよ! それより次体育だよ、着替えて外行かなきゃ」 「そういえば、やだなぁ暑いし」 そう、体育は暑いから嫌いだ。決して運動が苦手なわけではない、断じて 「つーちゃん運動音痴だもんね〜、足速いのに」 「ズバッというなズバッと」 走るとか単純なことなら大丈夫だがダンスとか球技とかはどうも苦手だ。あんなのできるのは人間じゃない。 愚痴を吐きながらも外に出るとやはり暑い。 「あー、日焼け止め塗ってこればよかったよー焼けちゃう〜」 「持ってきたよ、使う?」 「本当!? つーちゃん大好き!」 「わっ、急に抱きつかないでって恥ずかしい」 こういう事を公然とするから鈴は怖い。まぁそれは入学当初からなので今更なのだが 今日の体育は持久走だった。 理由としては近々うちの学校恒例マラソン大会があるためその練習を兼ねてだそうだ。 とりあえずペースは自由だから鈴と一緒に走る。 タイム測定よりはましだがノルマで周回数が決まっているのが怠い。 「あー、死にたくなってきた」 無意識のうちに、声が漏れる 「つーちゃんそればっかだね」 苦笑しながら鈴に指摘される。聞かれてたか、というかそればっかってことは 「もしかして私結構口に出てる?」 「口癖くらいには出てるよ?」 「まじか」 「まじまじ」 まじか。私は結構脳と口が直結しちゃってるタイプの人間だったらしい その後はしりとりでもしながらぐだぐだとノルマを達成した。 鈴によればあれから3回は「死にたい」と言っていたらしい まじか。
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