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7月のある日
毎週日曜日には、ばあちゃん家に通っている。
昼前に起きて、お昼のバラエティ番組を母と見ながらご飯を食べて、勉強道具を一式持って家を出る。自転車でばあちゃん家まで十分、静かな住宅街を風をきって進む。ばあちゃん家に着くと、ばあちゃんは家の前で打ち水をしていた。もう七十を過ぎているのに足腰も悪くなくとても元気そうだ。僕に気がつくと「おお〜そうちゃん。スイカあるから食べてき」と嬉しそうに僕を家の中に招き入れた。綺麗に手入れされた小さな庭に自転車を止めて中に入った。
ばあちゃん家に来たら、まずひいばあちゃんに線香をあげる。それから荷物を置いて入り口から一番遠くてテレビの見やすい椅子に座る。ばあちゃんが八分の一サイズに切ったスイカを真っ白な皿に乗せて部屋に入ってきた。自分の分はいいからと僕の分だけ目の前に差し出した。昼すぎのラジオが耳に心地いい。真っ赤な果肉にかじりついた。甘くてみずみずしい。ラジオからは陽気な笑い声が聞こえる。タネをポスポスと皿に飛ばしつつ完食した。スイカの皮だけが残った皿を遠くへ押しやり、勉強道具を広げた。ばあちゃんは静かに細かい字の書いてある本を読んでいる。眼鏡の奥の瞳は真剣そのもの。きっと今写真を撮っても気づかないだろう。気持ちのいい風が部屋を通り抜け、窓際の風鈴を鳴らした。こういう季節ものをばあちゃんはちゃんとやる。透き通った音が夏を感じさせる。夏は嫌いだなんて言いながらちゃんと楽しんでいる。扇風機のブーンという音が心地よくてこのまま寝てしまいたくなった。
夕日色に染まった部屋。家の前を中学生が楽しそうに自転車で通り過ぎた。台所からカレーの香りが風に乗って来た。全く進められなかった宿題に目を落としながらもう頭の中は夕飯のことでいっぱいだった。少しだけ問題を解くと頭が冴えてきてやる気が出てきた。その時、炊飯器が鳴った。
ばあちゃん家の夕飯はやたらとおかずが多い。カレーがメインで豆腐、ほうれん草、味噌汁、肉団子、ハムカツ、ひじき。僕は少食だといつも言っているのに大盛りによそってくれる。味わかんないけど、といつも謙遜するがあったかいこの普通のカレーが僕は好きだ。少し早い夕飯を食べながら夜のバラエティー番組を見た。時おり夏期講習の話、宿題の話、部活の話なんかをしながらたまにしかないばあちゃんとの夕飯を楽しんだ。
お皿を片付けてばあちゃんは皿洗い、僕は缶コーヒーをお供に勉強を始めた。台所から聞こえる水の音を聴きながら無心で取り組んだ。ばあちゃんが皿洗いを終えて戻ってきた。課題の区切りがついたところで外も暗くなってきたので帰ると言って勉強道具をまとめた。ひいばあちゃんに挨拶を済ませて家を出ようとした時、残ったスイカをもたせてくれた。自転車のカゴにそっとスイカを入れて、ばあちゃんに手を振った。
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