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「慧さん?」
「蛍ちゃんは、笑顔でここにいてくれるだけでいい。それだけで僕たちの助けになる」
耳元で囁かれ、くすぐったさに身を捩る。
翔平は目の前の光景に口をあんぐりと開け、オウルはすぐさまいつもの所定位置に戻ろうとするが、慧に阻止され、目を吊り上げる。
「慧! 蛍から離れなさいっ!」
「やだよ。自分はいつもくっついてるクセに! フクちゃんばっかずるいっ!」
「えっと、あの、もしかして二人って付き合ってる?」
「さぁ……?」
先ほどまでの深刻な雰囲気はどこへやら。この切り替えの早さが、英探偵事務所だ。
暗い闇に対抗するには、眩いばかりの明るい光。ここは、闇に負けない揺るぎない光を放つ場所。
いつも通りの慧とオウルの攻防戦に、今日はキョロキョロと視線を彷徨わせる挙動不審な翔平がプラスされ、事務所はとても賑やかだ。
「うん、通常運転」
こそっと呟き、蛍は笑う。
この明るさが、自分たちの武器だ。闇を切り裂き、温かい光をもたらす最大の武器。
「私も偶には参加します!」
蛍は弾けるような笑みを浮かべ、目の前で繰り広げられる攻防戦の中に飛び込んだ。
了
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