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慧たちが『AMBITION』に到着した頃、翔平もちょうど駆けつけてきた。翔平の隣には、いかつい顔をした刑事がいる。
「水無月さんにも来てもらった。荒事になりそうな気がしたから」
「水無月さん、助かります」
慧が表情を緩めると、水無月がニッと口角を上げる。
水無月は警視庁広域犯罪対策室の室長で、翔平の上司にあたる人物だ。翔平とは対照的に、いかにも刑事といった鋭い目つきに190cmの大男で、武道の達人。そこらのチンピラ相手なら、こちらが一人でも事足りるほどの実力を持っている。いざとなれば、強行突破できるようにという翔平の配慮だった。
「ここにお宅の所員がいるっていうのは、確かなのか?」
水無月の問いに、慧が頷く。
「ここしかないと思います。そしておそらく、他の行方不明者もここにいるかと」
「情報を掴んだのか?」
「いえ。しかし、帳朔弥本人の情報もそうですが、この店の情報もほとんど取れないんですよね。それはもう不自然なくらいに。ということは、ここが宝の隠し場所ということに他なりません」
「なるほどな」
水無月がペロリと唇を舐めた。
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