危機

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「うおおおおっ!」  案の定、一人の男が水無月に突っかかるのを合図に、他の二人も慧と翔平に襲い掛かかってくる。 「椎名! 大丈夫か!」  荒事は不得手な翔平を気遣う余裕が水無月にはある。そして、水無月は慧の様子も窺っていた。見るからに優男な慧は、翔平よりも危なそうだ。しかし、慧は軽い身のこなしで男の攻撃を躱していた。  強烈な右ストレートをスレスレの位置で身を屈めて避ける。その瞬間、男から悲鳴があがった。水無月や翔平には見えないが、もちろんオウルの仕業だ。オウルが男の腕を思い切りつつき、ついでに噛みちぎりそうな勢いで嘴で挟む。 「いでえええっ!」  男の腕から血が流れる。益々頭に血が上った男は、無闇に攻撃を仕掛けてくる。そのことごとくが空を切り、オウルの格好の餌食となった。 「お前……っ 何か武器を仕込んでやがるな!」 「は? どこに目つけてんの? 何も持ってないでしょ? ほら」  慧はおちょくるように手を広げ、何も持っていないとアピールする。その隙をついて男が攻撃してくるが、そんなものは予想の範疇、慧は間際で避け、今度は自分で拳を入れた。慧の拳は男のみぞおちに入り、男は苦しげに背中を折る。 「これ以上やっても意味ないと思うけど」  苦しげな息を吐きながらも、男はヨロヨロとした足取りで慧に向かってくる。
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