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店の中に完全に入ると、数人の男が待機していた。しかし、彼らは先ほどの男たちとは様子が違う。屈強というより、むしろ細身といえる。ただ、目つきが鋭く隙がない。
「こっちの方が厄介そうだな」
水無月が小声で呟いた。翔平はゴクリと唾を飲み込む。
すると、慧が一歩前に進み出て、奥に向かって声をあげた。
「そこにいるんだろ? ……帳朔弥」
店の奥にはVIPルームがある。その扉が開き、中から朔弥が優雅な身のこなしで出てきた。
男たちが一斉に朔弥を見つめる。朔弥は手を挙げ、男たちを制する。
「いいよ。君たちはそのまま待機していろ」
男たちは忠犬のように朔弥に従っていた。朔弥がインフェクトなら、彼らもそうなのだろうか。
慧がオウルを見遣ると、オウルは一度だけ首を横に振った。
「彼らはインフェクトではありません。そして、やはり朔弥からもインフェクトの気配がありません」
やがて水無月も前に出て、朔弥をジロリとねめつける。
「あんたがオーナーの帳朔弥か。行方不明の女性たちがここにいるとの情報を受けたもんでな、店の中をくまなく捜索させてもらいたいんだが」
朔弥は小さく笑い、水無月の鋭い視線に真っ向から立ち向かう。ほんの少しの動揺も見られない。水無月はチッと微かに舌打ちをした。
「嫌だと言っても、あなた方はそうされるんでしょう?」
人を食ったような言い方に、水無月は眉を顰める。今にも飛び掛りそうな水無月を、翔平は背後からさりげなく宥めた。
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