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「穏やかな性格の椎名さんと、気性の荒い水無月さん、バランスの取れたいいコンビですね」
朔弥の言葉に、慧が眉をピクリと上げる。いつの間にか背後を取られていた。慧は振り返りながら、朔弥と一定の距離を取る。
「気配もなく後ろに立たれると、ゾッとするな」
「それは申し訳ありません。しかし、簡単に背後を取られるなど、マスターとしては失格ですね」
「……」
朔弥は「マスター」という言葉を口にした。間違いない、彼はインフェクトだ。オウルや蛍が感知できないとなると、新種なのか。慧の背に嫌な汗が流れた。
朔弥は口元を歪めながら、慧の肩に視線を遣る。
「護りとしても失格ですね。オウルさん」
「……やっぱりね。オウルが見えているんだ?」
「はい。初めてお会いした時から、ずっと敵意のこもった視線を向けられていましたしね」
オウルの全身が緊張と警戒で強張っていた。ピリピリと張り詰めた空気が流れる。オウルは目を細め、じっと朔弥を見据えている。臨戦態勢を取るオウルを見て、朔弥がおどけたようにヒョイと肩を竦めた。
「蛍さんに対する態度とは雲泥の差ですね。私にも、あの甘えるような仕草をしていただけませんか? なかなか愛らしかったですよ」
「蛍以外にそんなことできるわけがないでしょう? 男相手にそんなことをしても、何の得もありません」
「あれ? 英さんにもしないんですか?」
「するわけないだろう? ともすれば、僕よりも蛍ちゃんを優先して守っちゃうほど、蛍ちゃんを溺愛してるんでね、うちの護りは」
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