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「あなたは、彼女たちの欲望を受け入れる器ではなかったということね。人一倍強い虚栄心を持っているだけで、所詮は小者。実験は失敗だわ」
「実験……?」
声が掠れる。耳を疑う。七桜は優美に何をしたのだろうか。
蛍が恐る恐る尋ねると、七桜は美しい笑みはそのままに、優美から手を離して蛍を振り返った。
「朔弥に心を奪われた女たち全員をインフェクトにして、その瘴気をこの女に食べさせたの」
「な……に……」
何を言われているのか、蛍にはさっぱりわからなかった。
インフェクトの瘴気を人間に食べさせる? そんなことをすれば、死んでしまうではないか。
以前慧が言っていた。人がインフェクトの瘴気に触れると、経緯はどうあれ最終的には死に至る、と。
それなのに、行方不明者全員分の瘴気を体内に取り入れるなど、考えられない。もしそれが事実なら、優美が生きていられるわけがない。
「優美ちゃんは……インフェクトじゃない」
普通の人間の気配ではない。しかし、インフェクトではなかった。それだけは確かだ。
「えぇ、そうよ。まだインフェクトじゃない」
「まだ……?」
ゾクリと背筋に悪寒が走る。まだ、と七桜は言った。ということは、いずれそうなるということか。
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