危機

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「本当に素敵な顔。うっとりするわ」 「……優美ちゃんはどうなるの!!」  強い視線を向けると、七桜が残念そうに溜息をつく。 「さっきの顔の方が素敵なのに。まぁいいわ。あなたには、もっと絶望を味わってもらいましょうか」  七桜はこの世のものとは思えない、艶やかな笑みを見せた。 「彼女の身体はこれ以上持たないわ。もう死んだも同然。でも、ただで死んでもらうのは勿体無いわ」 「どうする……つもり?」  そんなことは決まっている。答えを聞かなくてもわかっている。答えを聞くことで、更に絶望することもわかっていた。  七桜は罠にかかった獲物を捕食するように、唇を舐める。 「インフェクトにするわ。そして、あなたの命を奪う。あなたも、お友だちに殺されるなら本望でしょう?」 「……っ」 「残念ね。マスターも護りも間に合わないみたい」  蛍の脳裏に慧とオウル、二人の顔が思い浮かぶ。  もう会えないのだろうか。会いたい。でも、危険な目に遭わせたくない。 「ふふ。人間をインフェクトにするのは最高の娯楽よ。あなたもその目にしっかりと焼き付けておくのね」  七桜は再び優美の元へ行き、手の平を翳した。 「止めて……」 「ぎゃああああっ!!!!」  断末魔のような叫び声が響き渡った。目を背けたいのに、蛍の瞳は優美の姿に焦点を定め、動かない。これも七桜の力なのかもしれない。
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