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「優美ちゃんっ!!」
絶対に助ける、そう決めていたのに。
七桜の手によって、段々と人の姿が失われていく。苦しみ足掻きながら、優美がインフェクトへと変貌していく。それを目の当たりにしながら、蛍にはどうすることもできなかった。
自分の無力さを呪う。自分の情けなさを呪う。消えてしまいたい、蛍は切実にそう願った。
何もできない自分など必要ない。慧たちの足手まといになってしまう自分はいらない。
七桜は満足そうな笑みを蛍に向けている。蛍は今、全てに絶望した虚ろな表情をしていた。
「あーーーーーーーっ!!!!」
金切り声が耳をつんざく。それきり、優美は動かなくなってしまった。
「優美……ちゃん……」
優美は、元のように美しい姿に戻っていた。しかしそれは、優美の命が尽きたことを示す。
「彼女が目を覚ました時、それがあなたの命が終わる瞬間。まだもう少し時間がかかりそうだから、私は一旦席を外すわ。目覚めた頃、また来るわね」
七桜はひらりと身を翻し、部屋から出て行った。
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