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「わああああああっ!!!!」
喉が潰れそうなほどの叫びが中から聞こえてくる。
七桜はこれ以上なく幸せそうな笑みを浮かべた。防音を完璧に施された部屋だというのに、漏れ聞こえてくるとは。
「これで、ヒーラーは闇に堕ちた」
七桜は歩みを進めながら、独り言を呟く。
「ヒーラーを獲得した時は面倒なことになったと思ったけれど、意外とそうでもなかったわね。よかったけれど、少しつまらない」
店に慧たちが乗り込んできたと報告があった。朔弥が足止めをしているはずだが、どうなったろうか。例え突破されても問題ない。この場所は地下で、おまけに隠されている。簡単には見つけられないはずだ。
マスターである慧なら、隠し部屋の存在に気付くかもしれない。しかし、ただ闇雲に探しても無駄だ。その間にこちらは計画どおり事を進める。
ヒーラーを壊し、マスターの片翼を折る。マスターは思いの外、ヒーラーに入れ込んでいる。ヒーラーを失えば後はどうなるか、火を見るより明らかだ。
「マスターが絶望する顔も、とんでもなく美しいのでしょうね」
うっとりとした夢見心地の表情で、七桜は蛍を閉じ込めている部屋を振り返り、悪戯っぽく小首を傾げた。
「ご愁傷様」
そう呟くと、七桜はその場所からフッと姿を消した。
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