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「やっぱりここだ」
慧は両手を翳し、その場所に力を放出した。すると、ガタンと音を立て、フローリングの一部が外れる。そこには、地下へと続く階段があった。
「慧、間違いありません。蛍の気配がします!」
「よし……油断するなよ」
「はい!」
オウルは慧の肩に戻り、感覚を研ぎ澄ませた。階段を下りる直前、慧はVIPルームの入口を確認する。朔弥のことだから、追ってくるのではないかと思ったのだ。しかし、その気配はなかった。だが、気配がないからといって安心はできない。朔弥は気配を殺して近づくのだから。
「朔弥に気をつけてください」
オウルの言葉に慧は頷く。
「わかってる。オウルこそ、蛍ちゃんの気配を逃すなよ」
「当然です!」
慧は、朔弥の不意打ちの攻撃に備えつつ、足早に前進する。そして、オウルは引き続き、蛍の気配を追うことに集中した。
階段を下りると、長い通路に出た。いくつか部屋があるが、手前側の部屋にオウルは反応しない。その時、一番奥から何かがぶつかるような大きな音がした。
慧が全速力で走り、オウルはそこまで飛んで行く。そして、追いついた慧に言った。
「ここです! この中に蛍が!」
パッと見には、壁にしか見えない。しかし注意深く見てみると、目につきにくい小さな取っ掛かりがある。間違いなくここは部屋だ。
慧は取っ掛かりに指をかけ、開けようとする。しかし、当然のように開かない。どうやらこの部屋は防音仕様のようで、先ほどの音を最後に、中からは何も聞こえてこない。
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