負の代償

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「くそっ……無理やり開けて蛍ちゃんに怪我でもさせたら……」 「慧、考えている余裕はありません! なるべく中に影響が出ないように扉をぶち破るのです!」 「ったく……なんつー無茶なオーダーだ……よっ!!」  慧は手の平を翳し、取っ掛かり部分を大きくするため破壊した。どうやら鍵の部分も壊れたようで、扉が自然に開く。 「ぐあああああっ!!」  中で繰り広げられている光景に愕然とした。蛍がインフェクトに組み敷かれ、首を絞められている。 「蛍っ!! 今助けますっ!」  蛍の意識はないようだった。インフェクトは蛍の命を奪おうと、唸り声を上げながら力を強めていく。オウルは一目散にインフェクトに飛びかかり、瘴気を喰らい始めた。 「がああああっ!!」  自分の瘴気が喰われていることに気付き、インフェクトの手が蛍から離れる。その隙に、慧が蛍を抱き寄せ、結界を張った。 「蛍ちゃんっ、蛍ちゃんっ!」  慧が呼びかけても蛍は反応しない。慧は蛍の口元に手を翳し、真っ青になる。蛍は呼吸をしていなかった。 「蛍!!!!」  大声で叫び、蛍をきつく抱きしめる。その時、微かに脈打つ鼓動に気付いた。そして、やっと冷静になる。蛍の身体はまだ温かい。今ならまだ間に合うはずだ。慧は気道を確保し、人工呼吸を施す。 「……頼むからっ」  結界を維持しながらの救命措置に、慧の額から汗が流れ落ちる。一心不乱に蛍を取り戻そうと格闘していたその時──。
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