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「ようこそ、マスター」
背後から声がした。慧が振り返ると、絶世の美女が艶やかに微笑んでいる。いつの間にか、七桜がそこに立っていた。
「君は……」
「け……い……さん……」
かろうじて聞き取れるほどの小さな声に、慧はすぐさま反応する。腕の中でぐったりしていた蛍が、苦しげに息をついていた。
「蛍ちゃん……!」
ゆっくりと、包み込むように蛍を抱きしめる。慧は心から安堵し、大きく息を吐き出した。そして、改めて美女に向き直る。
「君は、オリジンだね」
「えぇ。さすがマスターね、英慧」
「へぇ、名前も知ってるんだ。でも残念ながら、僕は君の名を知らない」
「朽葉七桜よ。以後お見知りおきを」
緩やかに弧を描く口元は、何とも言えず妖艶だ。普通の男ならそれだけで魅入られ、動けなくなってしまうだろう。
しかし慧は、ギラリと切れるような視線を向け、結界を強くする。
「ちょっと遅かったみたいね。彼女が目を覚ますまで、もう少しかかると思ったのだけれど。それにしても、目を覚ましてすぐにヒーラーに襲い掛かるなんて、よほど恨んでいたみたい」
インフェクトを見ながらそう呟く七桜を見て、慧が激しく表情を歪ませる。
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