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「……もしかして、あのインフェクトは江坂優美か!?」
インフェクトと化した優美は、人間の頃の面影を残していない。だから、一見しただけではわからなかったのだ。
七桜は無邪気な笑みを浮かべた。
「えぇ、そうよ。二人は友人同士だったのね。いえ、友人ではないわね……少なくとも、優美という女にとっては。彼女にとって、ヒーラーは妬みの対象だった。相当羨ましかったみたいよ?」
「まさかお前は……」
「もちろん、彼女がインフェクトになる様子をじっくり見てもらったわ。友人だった女がインフェクトになっていくのを見ているヒーラーの表情、うっとりするほど美しかった……!」
恍惚とした表情で語る七桜に、慧の怒りが頂点に達した。
蛍は優美を助けたいと思っていた。それなのに、為す術もなく、目の前でインフェクトにされてしまったのだ。その時の蛍の絶望を思い、次から次へと怒りが湧きあがってくる。
「あら、絶望に歪む表情はさぞや美しいと思っていたけれど、怒りに歪む顔も素敵ね。恨んで、憎んで、あなたは今、私を殺したいと思っている」
それには応えず、慧は七桜に向かって真っ直ぐに腕を伸ばした。矢のような鋭い光が七桜の心臓に向かっていった刹那、それは闇に飲み込まれる。
「……チッ」
七桜の目の前には朔弥が立ちはだかっていた。朔弥も慧と同じように腕を伸ばしている。慧の光を飲み込んだのは、朔弥の作り出す闇だった。
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