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「味方に攻撃か……さすがはオリジン、容赦がないね」
すると、七桜は朔弥を蔑むように見つめ、吐き捨てるように言った。
「私に味方はいない。朔弥はただ、私に仕える者に過ぎない。言うなれば、駒。他のインフェクトとそう変わらないわ。彼には、無数に存在するインフェクトを束ねる面倒な作業をさせているだけ。後は私の護衛係ってところかしら?」
「それは、味方と言わないのか?」
七桜は優雅に口角を上げる。
「認識の違いね。あなたはそれを味方というのだろうけど、私はそうじゃない。朔弥は私を護り、仕えているけれど、他のインフェクトより少し秀でているだけ。駒には違いないわ。だから、口答えなんて許さない」
慧は重々しく息を吐き出した。
オリジンは人間の姿をしているが、人間ではない。人の心は一切持ち合わせていない。それを思い知った。これほどまでに美しい容姿をしているというのに、中身は闇で塗りつぶされている。
オリジンも自分と同じような境遇なら、果たして攻撃なんてできるのだろうか。
そんな風に考えたこともあった。しかし、それは杞憂だったようだ。それに、もしも七桜が自分の意思に反して、オリジンとしての役目を果たさなければならない業を背負っていたとしても、もう決して許すことはできなかった。
慧は蛍を見つめる。虚ろな瞳でこちらを見る蛍に、切なくも優しく微笑みかける。
「遅くなってごめん。……この先はこんなヘマしないよう、絶対に守るから」
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