負の代償

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「駒だからこそ、ですよ。今後生み出されるインフェクトたちも含め、彼らを統率し、管理する。私はインフェクトの長です。七桜様の言うとおり、他の雑魚に比べれば多少秀でてはいますが……所詮は同じインフェクト。駒にすぎません」 「お前はそれでいいのか?」 「いいも何も、それが事実です」 「おしゃべりはもういいかしら?」 「申し訳ございません、七桜様」  冷ややかな視線を受けながらも、朔弥は恭しく頭を下げる。その忠実ぶりは、洗脳のようにも感じられた。  洗脳なら、いつかは解ける日が来るかもしれない。しかし朔弥の洗脳は、彼の命が尽きるまで解けることはないだろう。いや、命はすでに尽きているのだ。彼はインフェクトなのだから。 「それでは、ごきげんよう。また会うことがあるといいわね」  七桜は天使のような微笑みを最後に、朔弥とともに姿を消した。 「……っ」  背後から強い光を感じる。オウルの浄化が始まったのだ。  漆黒に染まっていたオウルの羽が、少しずつ白く戻っていく。光を受け、白銀のように輝くオウルの翼に、慧は目を細めた。  その強い光に呼応したように、蛍の瞳にも光が宿り始める。蛍の反応に気付き、慧はそっと声をかけた。 「蛍ちゃん」 「……」  蛍は緩慢な動きで慧と視線を合わせる。じっと見つめてはいても、蛍の瞳は慧を映してはいなかった。しかし今は違う。
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