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髪がサラリと揺れる。顔を上げると太陽が眩しい。しかし、気温はさほど高くなく、爽やかな陽気だった。
「わざわざ来てもらって悪いね、ありがとう」
翔平が申し訳なさそうにしながら、A4サイズの封筒を蛍に手渡す。マチ付き封筒の中身は、蛍の勤務先である、英探偵事務所の所長、英慧が翔平に頼んでいた資料だという。
慧の幼馴染である翔平は、警視庁の刑事であり、二人は不可解な事件を捜査する際に協力しあう関係だ。ちなみに、翔平と慧は幼馴染で、気心の知れた仲である。
「いえいえ。散歩がてら外に出られて嬉しいです」
そう言ってにっこり笑うと、翔平が照れたように笑った。しかし、すぐにハッとしたように蛍の左肩を凝視する。
「オウル……いたりする?」
「いませんよ。お留守番です」
「慧がいたら絶対に「翔平君がデレてるよ!」なんて、オウルに言いそうだから」
「あははは! オウルがつつくのは慧さんだけですよ」
「でも、敵認定されたら僕もつつかれそう」
フクロウの姿をしているオウルは、蛍にちょっかいをかける者に容赦がない。現在のところ、つついたり体当たりをして攻撃をするのは慧だけだが、翔平も危険と見なされれば、無事では済まないだろう。
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