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「……フクちゃん、ヤキモチもほどほどにしてくれるかな?」
オウルはキッと慧を睨む。
「慧こそほどほどにしてください。私に対抗して蛍にちゅーしようとするなんて!」
「エロフクロウ!」
「エロマスターに言われたくありませんっ!」
子どもじみた口喧嘩をしながら、二人も給湯室を後にしようとした。その時、ハッと気付く。
「あ、蛍の淹れてくれたルイボスティー」
オウルは慌てて人の姿になり、3つのカップを盆に乗せる。
「蛍ちゃんのルイボスティー、美味しいよ」
飲んだことのある慧は、得意げな顔でそう言う。オウルはちょっと気にくわなくて、こう言い返した。
「当たり前です。私の蛍が淹れたのですから!」
「誰が「私の蛍」だよっ! 蛍ちゃんは僕のっ!」
「私のですっ」
マスターと護りは強い結びつきがあり、互いが協力関係にある。どちらが欠けてもたちゆかない。
しかし、蛍に関してだけはそうはいかないらしい。
「蛍については、慧は私の敵ですっ」
「のぞむところだっ!」
休憩室に戻ってからも口喧嘩を続ける二人に、蛍からの攻撃が飛んできた。
「ったく、何を言ってるんですか! 敵なんて、冗談でも言わないでくださいっ!!」
慧はこめかみを拳骨でグリグリとされ、「ぐえぇ~~~」と叫んでいる。
オウルも同じことをされるのかとドキドキしていると、頭のてっぺんを指でクイクイと強めに押された。しかし、特に痛くはない。
「蛍?」
「人の姿でいたら、慧さんと同じようにグリグリするところだったんですけど、フクロウ姿じゃそんなことできないし」
カップを運び終えた後、オウルはすぐにフクロウ姿に戻っていた。
「くそっ! フクちゃんってば悪知恵が働くっ!」
ただの偶然だったのだが、オウルはまた一つ、有益なことを学習した。
蛍を怒らせたり、おしおきされそうになったら、フクロウ姿に戻ればいいのだ!
「フクちゃんばっかり優遇されてる……」
「ほら、慧さん! 背中出してっ」
「痛い……」
「あーあ、また流血ですね」
しかし、蛍に手当てしてもらってる慧を見て、オウルは思う。これはこれで、おいしいのではないか?
「……」
再び、もやもやとしてくるオウルであった。
了
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