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「それにしても、あんなに天羽さんにべったりなオウルがお留守番なんて。さぞや帰りを待ちわびてるだろうね」
「本当は一緒に来るってきかなかったんですけどね」
ここに来る前のやり取りを思い出し、小さく笑みを漏らす。少し出てくるだけだというのに、相変わらずの大騒ぎを繰り広げたのだ、あの二人は。
『フクちゃん、ちょっと待って』
蛍の左肩に乗ったまま、蛍と一緒に外に出ようとしていたオウルに向かって慧が呼び止める。
『何ですか?』
『フクちゃんはお留守番』
『どうしてですか?』
オウルは慧の護りだ。基本は慧の側にいなくてはいけない。何故なら、慧は常にインフェクトに狙われているからだ。
もしもインフェクト側が慧を排除できたなら、この世はインフェクトの天国だ。思う存分瘴気を振りまき、人間の命を奪い、その魂を捕らえて自分の力にできる。それを目論み、少しでも隙を見せれば慧を食らおうと待ち構えている。
しかし、オウルが護りとして慧の側にいる時はそれができない。インフェクトにとって一番恐ろしいのは、自分たちの力である瘴気を食らい尽くすオウルの存在だ。だからこそ、オウルは常に慧の側にいて、慧を護らねばならない。
ただ、オウルにはインフェクトを感知できるセンサーのようなものがあり、常に側に控えている必要はない。センサーの感知できる範囲内なら、いつでも駆けつけることができるのだ。その範囲は広く、警視庁がある霞ヶ関から事務所のある六本木までなら全く問題なく、充分カバーできる。
なのに、何故慧は行ってはいけないと言うのだろうか。蛍も首を傾げた。
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