事の始まり

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『蛍と一緒に行きます』 『だから、ダメだって言ってるよね?』 『だから、どうしてですか!?』  オウルがキッと慧を睨みつける。しかし、そんなことくらいで怯む慧ではない。 『偶には蛍ちゃんを一人にして、のんびりさせてあげようよ。いつもべったりじゃ、蛍ちゃんも疲れちゃうでしょ?』 『私は別に……』 『蛍ちゃん! 気を遣わなくていいんだからね!』  気を遣ったつもりは全然ないのだが、慧の勢いに圧されて蛍は口を噤む。 『フクちゃんは蛍ちゃんに甘えすぎ。もうちょっと離れて見守るくらいの余裕がないと、嫌われちゃうよ?』  すると、オウルが不安そうに瞳を細め、蛍の顔を覗き込んできた。 『そうなのですか?』  オウルは見た目は大人だが、護りとしてはまだ新人で、ほとんど子どものようなものだ。護りとしての知識はある程度あっても、一般的なことはまだまだ覚束ない。だから、慧の言うことを鵜呑みにすることも多い。 『慧さん! そういうこと言うと、オウルが信じちゃうじゃないですか!』 『蛍、私のことを嫌いになりますか?』 『ならないです! なるわけないじゃないですか!』  すると、オウルは嬉しそうに大きな目をくるくると動かし、頭をすり寄せてきた。蛍はオウルの額をよしよしと撫でる。 『それじゃ、行きますから』  蛍がそのまま出て行こうとした時、慧が蛍の腕を掴んだ。
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