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(~prologue~)
ネオンの灯りが夜の街を照らす繁華街──
幾人もの人々が行き交う街中で、一人の若者がタクシーを止めた。
若者がタクシーへ乗り込むと、運転手はしわがれた声で尋ねた。
「どちらまで?」
「……“怪奇町十三番地”まで……お願い出来ますでしょうか」
「かいきちょう……?」
運転手は一瞬、顔をしかめた。
「あ~。あちらですね」
運転手はニタリと笑うと、タクシーを走らせた──
「あちらにはどういった要件で? 肝だめしか何か?」
「そんなに怖いところなんですか? じつは古い友人がそこに引っ越したらしいんで、『一度遊びに来いよ』と誘われまして……」
「へぇ、あんなとこに引っ越すとは……そのご友人なかなか度胸がありますなぁ。我々の同僚内でもあそこに通りたがる人はいませんよ。たとえ遠回りをしてでもあそこへは通りませんね」
「そんなに危ない町だったんですか? ……なんかすいません。そんな場所に行かしてもらって……」
バックミラーに映る運転手の口元がニヤリと笑う。
「──いえいえ。わたくしはそういうモノには慣れてるんで。怪談とか都市伝説が大好きなんですよ。よくお客さんに聞かしたりしてるんです」
すると、運転手がバックミラー越しに若者と目を合わせた。
「そうだ! どうせならお客さんもいかがです? 最近また新しいお話を調達致しましたので。怪奇町まではまだしばらく時間もありますし……暇つぶしがてらにはなると思いますよ?」
「なんか……もう話したくてうずうずしてるって顔ですね……」
「あっバレました? わたくし生まれつき顔にでやすいタイプでして……フフフフ……」
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