プロローグ

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プロローグ

 早送りボタン。  坊主の背中に向け、ポチっと。  木魚を叩くリズムがエイトビートになり、みんな立ち上がってザブトンを振り回して踊り始める。私はこの耐えがたい退屈と足の痺れから解放され、坊主に続いて念仏を唱え続けるという謎のイベントもハイテンションアンド巻き巻きでフィニッシュ――。  と、なればいいのだが、そんな便利なリモコンは令和に至る昨今、未だに発明されず。仕方なくこうして脳内でありとあらゆる妄想を開催したり、昨晩やりかけのまま寝落ちしてしまったゲームの続きをシミュレーションしたり。  あ、そういえば昼に一斉再放送が始まったドラマを録画するの忘れたとか、ゲームのイベントもうすぐ始まるとか、今更どうしようもないことを思い出してしまったり。とにかくこの極限まで薄く引き伸ばされた単調な時間は、まだ14年しか生きていない私にとって退屈極まりないものだった。  そもそもなんで私が今ここにいないといけないのか。すべてはおじいちゃんのせい。おじいちゃんが死んだせいである。
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