クロウの謎

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クロウの謎

 夕食。  演習上がりの砦兵達は朝よりも激しく食べ物の争いをしていた。  こいつらどんだけ底なしの胃袋なんだよ。  「はぁ……」  疲れた。  解けないパズルって本当にいろいろ削がれるよなぁ……。  「どした? 元気無いね」  肉をほおばりながらヒロが聞いてくる。  「ダメだ俺、暗号が解けねぇ……」  「暗号? クロウの?」  次いでキラもこちらを見る。  タカヤは脇目も振らずひたすら食べていた。  「うん……」  「セキュリティ外した?」  「……セキュリティ……?」  「最初に指紋認証したろ? そのままじゃセキュリティかかったままだけど」  と、ヒロが食べる手を休めて言う。  「え……、いや待て、ちゃんと信号は届いてるんだ。ちゃんと光って、その法則までは分かったんだよ」  「ああーー、なるほど」  「頼む、切実に暗号解読教えて欲しい」  「いや、それ完全にセキュリティだねー」  「え、マジ……?」  「マジマジ。セキュリティ解除されてたら光る法則なんて無いよ」  「……い、いやでも待てよ、ジンノ大佐が俺にクロウの使い方教えてくれた時も同じように光っていた気がするんだ」  「最初はセキュリティ状態かどうか判別難しいからね。しばらく時間が経てばセキュリティ状態に入る、で、バイブしたらみんな解除してるんだよ」  マジかよ!?  俺は慌ててクロウを出した。  「これ、これはどう!? これセキュリティどうなってる!?」  そう言って、ヒロにつきだした。  「いや、俺には分からないって。指紋認証した指でクロウを3秒以上触ってみて」  指紋認証、確か、人差し指。  人差し指を……。  「えっと、どこに?」  「どこでも」  適当な所に人差し指を置く。  一秒。  二秒。  三秒。  クロウはぼうっと緑色に光り、消えた。  「ほらやっぱりセキュリティじゃん」  と言ってヒロは笑っていた。  ……。  「ふ……。ふふ……」  「マリア?」  「ふふふふふふふふ……」  「マリア、どうした?」  「ふふふふふ……、ふはははは……」  「うああ! マリアが壊れた!!!」  くっそ!  くっそぉ!!!  こんな、こんな事で……!!!  俺って奴ぁ……!!  「!! マリアが壁に頭打ち付けてる!!」  「あああ!! マリアちゃん! 綺麗な顔粗末にしちゃダメだ!!!」  「ふふふ……」  「おい、タカヤも呼べよ!!」  「おいタカヤ!! おまえもマリアちゃん止めろ!!!」  「あ? うおお! 何してんだよマリア! 正気に戻れ! 戻ってこい!!」  ああ、電源も入れずにPCが壊れたと騒いでいる奴ってこんな感じなのか……。  そうだよな、考えてみれば渡されて最初にした指紋認証使わない訳無いもんな。  そのための指紋認証だもんな。  俺は……。  俺は…………!  俺って奴はどんだけ無能なんだ……!  その後みんなから、セキュリティ忘れるのは俺が初めてじゃ無いとか、大佐ももっとちゃんと使い方教えろよなとか大変ありがたいようなそうでないようなフォローを受けた。
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