私から貴方へ、貴方から私へ

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これって? 「手紙を書くんですよ。」 …。このメイドは小説が大好きだ。どうせどこかの恋愛小説からとってきたんだろうなぁ。 「これなら姿は見えないし、ダメだったとしてもダメージは少ないですよ。」 なんのダメージなんだろう?まぁやる価値はあるかな。 私は幼い頃のお礼と、覚えていなかったお詫び、パーティーのお礼などを綴った手紙を書き上げた。さて、これをどうしよう。 「おはよう。」「おはようございます。」 嶋田君とあやめが登校してきた。ちょうどいいところに。 「あやめ、いいところに。」私は蓮華さんの手紙を妹に託すことにした。 「お兄様はあまり家にいないから、いつになるかはわかりませんよ。」といいながら受け取ってくれた。 私もお礼の手紙であり、返事なんて全く期待してないので、それでいいよとお願いした。 次の日。 むすっとした表情であやめが声をかけてきた。 「これっ。」といって差し出されたのは一枚の封書であった。 「昨日帰ったら珍しくお兄様がいて。手紙渡したら、すぐに書斎に引きこもってしまったわ。」 どうやら夕飯も食べずに返事を書いてくれたらしい。 封をあけて中身を見る。 親愛なる君へ から始まる文章。えっ、えええええええっ!親愛なるって? どうやら蓮華さんが中学の時に流行っていた「恋人よ」というドラマで互いに手紙のやり取りをしていた男性から女性に送られる冒頭の一句をなぞらえたようだ。 親愛なるを辞書で調べる。親愛なる友や親愛なる両親の下に親愛なる君へを見つけた。 何々…。!!! 告白?プロポーズ? として多用されている?マジですか?蓮華さん。 「あまり深い意味はないと思うよ。」 となりで一緒に読んでいたあやめに言われる。どうやら蓮華さんは「親愛なる君へ」という語句を思いの外気に入っていて、使える場所をさがしていたらしい。 「おいおい、月島グループの若奥様誕生か?」 「結婚式絶対に呼んでよね。プロデビューしてたら二人のためのウェディングソング歌ってあげるから。」 嶋田君や茜の冷やかしに真っ赤になりながら家にかえったのである。
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