特別な日 11

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特別な日 11

「お早いですね。昨夜も遅くまで解読されてましたのに。――どうしたんです? 鼻と額が赤くなっていますが」  指摘されてしまった鼻を押さえ隠し、ルシカは照れ笑いを(こら)えた。 「おはよう。へ、平気です。それより受け入れの準備しておかないとですね。今日はミディアルから魔法の封印がなされた歴史文献と魔導書が届く予定ですし」  ソサリア王国の知識の宝庫――図書館棟の最高責任者であるルシカの口調は、まだ幾分ぎこちなかった。ここに詰めて働いている文官たちはひとり残らず、ルシカよりも歳上ばかりなのだ。直轄を任されている宮廷魔導士に就任して、二週間しか経っていないこともある。  加えていえば、古代に栄えた魔法王国期の歴史書や魔導書、そして後世でまとめ上げられた魔術書など、おそらくは世界にただ一冊きりしかない怖ろしいほどに貴重な文献までもが、この図書館棟に集められているのである。  肩に圧し掛かる責任という重圧は、他に比べるものもないほどに凄まじいものであった。緊張するなというほうが無理なのだ。
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