特別な日 12

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特別な日 12

「本日これから届く文献のリストはこちらです。ザナスとハイベルアの近郊にある遺跡の奥から発見されたもの、歴史書六十冊になります。それと同時に、ミディアルから連絡のあった『真言語(トゥルーワーズ)』の魔導書二冊の予定です」  厨房から届けられたサンドイッチをつまみながら報告を受けていたとき、東門にくだんの荷が届いたと連絡があった。図書館棟がにわかに(あわただ)しくなる。守りの結界に梱包された荷を移動させるだけでも精神をすり減らし魔力(マナ)を使い……ようやく一段落したときには、ルシカも文官たちもすっかりくたくたになっていた。  ようやく移動と分類が一区切りつき、ふぅ、とルシカが額の汗を拭ったとき、この二週間だけでもう何度も耳にした騎士隊長ルーファスの大声が外から聞こえてきた。 「殿下あぁぁぁぁッ!」  ルシカは弾かれたように顔をあげた。  ばんっ! という音ともに図書館棟の重厚な両開きの扉が力いっぱい開け放たれ、一階ホールにいた文官たちが眼を丸くしてそれぞれの作業の手を止める。
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