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特別な日 15
「大変です、陛下! お、王子殿下が『転移の間』にて、幻獣と交戦中なのです!」
「なんだと!?」
いつも冷静なファーダルス王も、顔色を変えて玉座を立った。
幻獣とは、本来この現生界に在らざるものである。魔力そのもので構成された身体をもち、こことは異なる理で行動しているのだ。魔獣より強く、上位種に至っては優れた知能と自我をもつ存在だ。剣や拳などの通常攻撃では、斬ることも殴ることもできない相手なのである。
「テロン! クルーガー!」
ふたりのことを考え、ルシカは蒼白になった。国王からの指示を待つことも忘れ、杖を握りしめてそのまま駆け出す。足に纏わりつく魔法衣の裾を片手で引き上げ絡げるようにして、西の棟の奥へ急いだ。
気づいて横を見ると、傭兵隊長ソバッカが並び走っていた。さきほどまで謁見の間の入り口に立っていたことに思い至る。
「幻獣が出たということだが、どこから入ったというんじゃ?」
「門や壁からではなく――もしかしたら『転移』で巻き込んだものかも知れません」
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