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特別な日 18
濃い魔力の気配――生命と肉体そのものが魔法的な生き物であることから、間違いなく魔獣ではなく幻獣であることがわかる。しかも上位種にあたる相手だとルシカは判断した。『炎狼』は俊敏で鋭い牙爪を持っている。その体は高熱の炎であり、知能も高いはずだ。あなどれる相手ではない。
「幻獣に通常攻撃は通用しないわ! 魔法じゃないと!」
叫びながらも、ルシカはすでに精神集中を終えていた。魔導の技を行使するための準備動作を開始する。
魔導とは知識だ。世界の理の全てを理解することで、自身の魔力と意思のもとに対象の存在形態を変容させる。それが魔導の魔導たるゆえんであった。
行使する者の意思を押し通すための魔力の道筋を確保する、それが準備動作の役割だ。
ルシカは腕を宙へすべらせるようにして眼前の空間に魔法陣を描き、『武器魔法強化』の魔法を行使した。
効果はすぐに現れ、クルーガーの剣とソバッカや兵たちの剣、部屋に存在している全ての剣の刀身に青い粉のような煌めきが纏わりついた。広い範囲の複数の対象に魔法をかけられるのは、魔導士としての力量の凄まじさだ。
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