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特別な日 2
手もとから視線をあげると、鏡に映っている自分に出逢った。オレンジ色に輝く大きな瞳で瞬きを繰り返している、十六歳の少女。
丸みを帯びたすべらかな頬と、鉛筆で描いたかのようにほっそりとした鎖骨から胸へかけての素肌が、秋めいてひんやりとする空気にふれて桜色に染まっている。
櫛を置いて腕をあげ、甘やかな膨らみをそっと押さえ隠し、喉もとのまろやかな線を指先でたどる。いずれも頼りないくらいにほそやかで透き通るように白く、あまりにも華奢すぎた。
「旅に出るのも、戦うのも、魔導書や文献を運ぶのも……これじゃあ頼りないかな」
唇を少々とがらせながら腕を撫でさすり、ルシカは睫毛をそっと伏せた。
背が高く体格のよいふたりの王子の間で、細く小柄な自分の姿は埋没しているのだろうなぁ……と脳裏に描いてしまう。彼らと並び立つことができるくらい強くなりたいとルシカは思った。背だってもっと高ければ、とも思う。
けれど、宮廷魔導士としての地位についたばかりで忙しい毎日だ。からだを鍛えようにも自身の知識や魔導の力を高めようにも、その暇すら確保できない現状であった。王宮での生活に慣れていないせいか、日々通常の業務をこなすだけでせいいっぱいなのだ。
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