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特別な日 20
「いけない……!」
『炎狼』の咆哮には、硬直や麻痺を引き起こす効果がある。ルシカは咄嗟に自身の内の魔力を高めて抵抗しきったが、自分以外の者を護ることはできなかった。
『炎狼』がニタリと嗤ったような気がした。狼が舌なめずりをすると、血でも啜ったかのように赤い口蓋を縁取る黒線の隙間から、ぬれぬれと輝く真珠色の鋭い歯がずらりと見えた。ルシカに向け、狼が跳躍しようと牙を剥き、全身に力を籠めたのがわかる。
グァウッ!
跳びあがったその瞬間。
「させるかッ!」
ザンッ! とクルーガーがその背に剣を突きたて、狼をその場へ縫い付けた。
ルシカは驚きに眼を見開いたが、その隙を逃さなかった。
杖を持つ左腕を振りあげ右の足で素早くステップを刻み描き、光り輝く魔法陣を展開する。白と黄の魔導の輝きが宙を駆け奔り、『炎狼』の頭上に到達した。
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