特別な日 27

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特別な日 27

「急いで加工してもらったんだ。これが、今日の俺たちの冒険の目的さ」  クルーガーもそう言いながら、握ったこぶしをルシカの前で開いた。テロンの手のひらにある宝石と同じ色、同じ大きさをしている。イヤリングらしく、ふたつでひと揃いになっているらしい。  つややかな赤い色の(たま)は、燭台に灯された明かりを反射して、誇らしげに光り輝いている。ルシカの知っているどの宝石よりも煌びやかで優美であり、どの宝石よりもなめらかな表面をしていた。 「『獣谷(けものだに)』の奥には、魔法王国期からずっと遺されているという遺跡があるんだ。そこに眠る双子の護り石の伝説をソバッカから聞いて、行ってみたんだ」  クルーガーの言葉を耳にした騎士隊長が、恨みがましい視線を傭兵隊長に向けた。向けられたほうはすでにあさっての方向へと眼を逸らしている。 「ルシカの持っている魔法王国の『五宝物』ほどではないけれど、古代の宝だっていうし、ふたつが対になっている宝玉なんてぴったりだろ?」 「あ……あの、ありが、とう。すごく嬉しい……!」
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