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特別な日 31
魔導士の少女に突っ込みを入れつつ、座って杯を傾けていたクルーガーも笑顔になっている。その周囲でヴァンドーナとソバッカが何やら愉しげな会話に花を咲かせ、杯を握りしめたルーファスがふたりに割って入るように何かを力説していた。ドッと響く笑い声。
ルシカはそんな仲間たちを眺め渡し、オレンジ色のあたたかな色彩の瞳を微笑ませた。自分の居場所を見つけたような安堵を感じ、鼓動の高鳴る胸にそっと手を当てる。
ふと自分に向けられた視線に気づいて顔を向けると、穏やかな微笑みで見守ってくれているテロンと眼が合った。
照れたように笑って眼を逸らしたふたりはすぐに視線を戻し、互いに想いを込めた瞳でにっこり微笑みあったのである。
これは、魔導の力を継承した少女と王国を背負い立つ前の王子たちの、大切な記憶と想い出の一頁――。
――特別な日 完――
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