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特別な日 4
中庭の回廊に差し掛かったとき、前方から歩いてきた青年がルシカの前で足を止めた。
「おはよう、ルシカ。今朝も早いんだな」
「おはよう。テロンも早いのね。――もしかして早朝トレーニング?」
動きやすそうな胴着を着込んでいることから、体術の訓練でもしていたのかな、と思う。
このソサリア王国は世襲君主制だ。つまり、現国王ファーダルスの息子であるテロンは王位継承権を持っている。それなのに、こうして顔を合わせて話をするときにもまったく緊張を感じないのは、このテロンという名の青年の人柄なのかも知れない。ルシカにとって、はじめてできた友人ということもある。
いかにも育ちの良さそうな物腰と端正な顔立ちをしているのに、くせのない金色の髪は惜しげもなくばっさりと短く整えられ、体は鍛えられていて逞しく、長身である。けれど粗暴なところはまるでなく、穏やかで落ち着いた表情をしている。いつも優しげに微笑んでいる青い瞳は、いつもルシカを安心させてくれるのだ。
テロンは心配そうな表情で、長身をかがめるようにしてルシカと視線を合わせてくれた。
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